2012年5月 3日 (木)

シッダールタ  ヘッセ・高橋健二訳     

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シッダールタ (新潮文庫)

何というか、よくわからない小説である。

シッダールタとは釈尊、つまり仏陀の出家以前の名前のことらしい。

しかしこのシッダールタはゴータマ・シッダールタ(すなわち仏陀)のことではない。

このシッダールタが生に苦しみ抜いたあげく、ついに悟りの境地に達する。

その苦しみの過程を描いた最高の芸術作品だと絶賛する人が多いのだが、ぼくはよくわからなかった。

なんせ、このシッダールタは歓楽と酒、もうけと蓄財の悪にふけってそこから抜け出せないのである。

大金持ちの遊女との愛欲におぼれ、できた子供に命令され、軽蔑され、そのことにまた悩む。

 また訳者高橋健二さんの(新潮文庫版)こういう文章に少し耐えられなかった。

「ゴーヴィンダは知っていた。『シッダールタは、普通のバラモン僧には、いけにえをつかさどる怠慢な役人には、呪文をあきなう強欲な商人には、見せかけばかりで空疎な弁舌家には、よこしまで腹黒い司祭には、そしてまた多くの畜群の中のおとなしく愚かな羊にもならないだろう』ということを。」

清水義範が「永遠のジャック&ベティ」でパロッたような、中学英語の直訳文体でしか喋れないまま成人したジャックとベティの会話のような訳が続くのである。

他の人の訳も読んでみたい。

 ヘルマン・ヘッセは間違いなく偉大な作家だと思うが、ドイツ人でありアングロ・サクソンの彼が果たして仏教、仏陀というものを正しく理解しているのだろうか疑問に思う。

例えはおかしいが、倉田百三が「出家とその弟子」で描いた親鸞がキリスト教的な親鸞だと言われたように、微妙な違和感がある。

もちろん仏教ではなく、人間の悟りの過程を描いた哲学を詩的に書いたものだという解釈も可能だろうが、どうだろう。

シッダールタ (新潮文庫)

「カーネーション」総集編前編     

 3月までやっていたNHKの朝ドラ「カーネーション」の総集編をやっていたので見た。

OA中はほぼ毎朝見ていた、見逃した日は土曜日にBSでやる1週間の総集編で見た。

 今日見て、やっぱりいいドラマだなあと思った。

今日は前編なので3ヶ月分を90分に凝縮している。

枝葉末節を切り取っているので、本筋だけを見ることになり息がつけなかった。

 あらためて主役の尾野真千子のうまさを感じた。

凄味を感じるほどの演技だ。

男に生まれてきたかったという負けん気の強い女性を演じているが、他の女優さんがやっていたらこれほどの魅力を出せただろうか。

他の俳優さん達にもその気迫が乗り移って、皆からいい演技を引き出したかのように思う。

 それから父親役の小林薫の演技も特筆ものだ。

こんなにうまい俳優さんだったのだ。

頑固者で娘に遠慮なく暴力をふるう。

呉服屋という商売が次第に時代に取り残され、娘の成長とともに一家の中心も娘に移っていく。

そんな父親の哀感を見事に演じていた。

自分の父親とだぶって見え、途中から涙が止まらなくなった。

 それから、おばあちゃん役をやっていた正司照枝さんの演技がまたうまい。

母方の祖父母役の宝田明・十朱幸代のふたりもいい味を出している。

 そして何よりも脚本がすばらしい。

渡辺あやさんは実在の人物を主役に、実話を基にしてこれだけおもしろいドラマを生み出した。

ユニークな岸和田の町の人びとを随所に配置して、それぞれが活き活きと動いてドラマのおもしろさを増している。

そんな庶民の目を通して戦争の悲惨さまで描き出した。

 ほっしゃん。らが活躍する明日の後編が楽しみだ。

2012年4月29日 (日)

藤城清治影絵展

 先日奈良県立美術館に「藤城清治影絵展」を見に行ってきました。

藤城さんの初期から現在までの影絵、油彩画、水彩画など200点が展示されています。

 藤城さんのことはご存知だと思うが、日本の影絵作家の第一人者である。

知らない人も、「暮らしの手帖」やNHK「みんなの歌」の影絵、カルピスのマークや木馬座のケロヨンといえばご存知だろう。

 

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ジャワの影絵の影響を受けて、あの幻想的な光と影の世界をつくっている。

片刃カミソリで切り出されるという細かな花や葉っぱ、ジャワ風の人物の描き方に特徴があり、  独特の世界に引き込まれる。

 二十数年前になんば花月で子供向けに藤城清治さんのライブをやろうと思って動いたことがあるのだが、下見に行ったときに驚いた。

影絵が動くのである。

廻り灯籠のように絵がまわるのはもちろん、まるでアニメのように絵が動くのだ。

来ていた子供たちは大喜びだ。

大人のぼくも魅入られてしまった。

それ以来のファンであるが、今回久しぶりに見ることが出来、気持ちのよい世界に浸れた。

6/24(日)まで奈良県立美術館でやっていますので、ぜひお運びを。

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2012年3月10日 (土)

「傍聞き」  長岡弘樹

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傍聞き (双葉文庫)

 「おすすめ文庫王国」2012年ミステリー部門 ダントツの第1位だそうです。

本屋にも平積みされている。

「迷走」「傍聞き」「899」「迷い箱」の4編がおさめられている。

どれも短編ミステリーのお手本のような作品。

しかしぼくは物足りなかった。

その本質は「思わせぶり」にあると見抜いてしまったから。

黙ってやらないで、喋ったらすむだけのことを。

長編を読んでみたい。

傍聞き (双葉文庫)

「二流小説家」 ディヴィッド・ゴードン

SFやミステリやヴァンパイヤもの、ポルノを書いて、おまけに中学生の家庭教師までして身過ぎ世過ぎをしている主人公の売れない作家が、刑務所にいる連続殺人鬼から告白本の執筆を依頼される。

2012年度「ミステリが読みたい」大賞[海外編]

ほんとにおもしろい。

「星月夜」がなけりゃ今年の1位だった。

ディヴィッド・ゴードンは決して「二流小説家」ではない!というつまらないオチでしめますけど。

訳もいい(と思う)。

蜩ノ記

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「蜩の記」   葉室麟  

 ふとしたことから藩の紛争に巻き込まれ、十年後に切腹を賜ることになっている主人公が、山奥の村で家族とともに恬淡として静かな生活を送っている。

 そこへ同じように刃傷事件を起こして死罪の代わりに見張りを任された若侍が加わる。

 第146回直木賞受賞作。

「心ふるわす、感涙の傑作」がうたい文句。

 侍とは何とも厳しい世界だ、その凛々しい生き方に驚かされた。

しかし、もう一段迫るものがない。

ついつい藤沢周平や池波正太郎と比べてしまうのだなあ。

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蜩ノ記

2012年3月 4日 (日)

「星月夜」  伊集院静  

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星月夜

 今年のナンバー1決定です!

伊集院静が初めて書いた推理小説ですが、感動しました。

 一般の推理小説あるいは警察小説を求める人にはもしかしたら物足りないかもしれないが、殺人があり、犯人探しもある一般小説ぐらいに思って読んでいただいたらいいと思います。

 まず文章がいい、文章がうまいから会話が自然である。

推理小説にありがちな、刑事や犯人らしき人物の不自然な会話がない。

 それから登場人物に無理なキャラクター付けがないから安心して読める。

推理小説には、シリーズ化をねらっているのか、登場人物が変な癖を持っていたり、いかにもそれっぽい安易なキャラクター付けをされているものがいっぱいある。

そんな人間ばかりが登場する推理小説はもうたくさんだ。

その点、この小説に出てくる人物はみな自然で、物語の進行に連れ自然とキャラクターが浮き上がってくる。決してハナから無理矢理特異なキャラクターをつけられているようなことはない。

そしてそれぞれのキャラクターがみな魅力的である。

途中で登場人物に思い入れして泣きそうになった。

読み終えたときに何とも言えない感動がある。

 これは一般小説で成功した伊集院静が書いた推理小説だからだろう。

逆の場合、推理小説ではすごくよかったのに、そうでないものを書いた途端、とんでもなくつまらない、単に長いだけの小説しか書けなかった某小説家のような例がたくさんある。

推理小説というのはそれぐらい味付けが濃いのだろう。

そのせいで多少包丁使いが下手でもごまかせるのかもしれない。

この小説は材料を吟味して、味付けは薄くする代わりに包丁はものすごく巧みに使ってある。

それを味わえる人にはたまらなくおいしい小説である。

 この小説は松本清張の「砂の器」を連想させる。

渋い配役でぜひ映画化してほしい。

星月夜

2012年2月28日 (火)

「50歳を超えても30代に見える生き方」 南雲吉則

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50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 (講談社プラスアルファ新書)

 書店の店頭でタイトルに惹かれた。

最近老けてきたと感じており、若く見られたいと切に思っているからだ。

タイトルにいかがわしさを感じたが、著者が56歳だと知りすぐ買った。

この表紙の写真を見て下さい。

どう見ても30代である。

 書いてあることはごく当たり前のことが多い。

早寝早起き、肉・砂糖・塩を取りすぎない、薄着、たくさん歩く、たばこはやめる、酒は控える、等々よく言われていることである。

しかしそれがなぜいけないかということがほんとにわかりやすく説明されていて腑に落ちる。

 おもしろかったのは、肥満は寿命が6年、タバコも6年寿命が縮むらしいが、何と独身だと女性は4年、男性は8年も寿命が縮むという。

最悪が「都市型の貧乏(都会に住んでいながら定職に就かず、生活が不規則で、袋菓子やコンビニの弁当で毎日を過ごす人)」で10年縮むらしい。

 また、一生の間で飲める酒の量は決まっていて、男性は500キロ、女性は250キロというのもおもしろかった。

これを読んで自分にはあとどれくらい残っているのか心配になり、飲む量と回数を一気に減らした。

いつまでもおいしく酒を飲みたいから。

 あといくつかびっくりするようなことが書いてある。

・病院や医者や薬が病気を治してくれるのではなく、入院の目的は不摂生から切り離すこと

・ガンは悪者ではない

・免疫を高めすぎてはいけない

・肌は洗うとうるおわなくなる

・花粉症を撃退するには、マスクをつけない、口呼吸で花粉を取り込む、薬を一切使わない。

・腹六分目で、お腹がグーグー鳴ればなるほど若返りが進む。

・果物や野菜は皮ごと全部食べる

・イワシやアジ、サンマなどの小型の青魚や小魚、イカとかエビも骨ごと、腹ごと、頭ごと食べる

・風邪をひいたら安静は間違い

・スポーツをすると健康になれない

・睡眠のゴールデンタイムは10時から夜中の2時

これを読んで、夜は早く寝て、ミカンを皮ごと食べるようにしています。

 検査の結果に一喜一憂するのではなく、「自分自身が快適に過ごせているか」「不快症状がないか」と自分の感覚に常に問いかけることが大切だというのもなるほどそうだ。

何よりも、「死を覚悟して一日一日を感謝して生きる」これが若さを保つために一番大事だという言葉は、中村天風さんの「心に成功の炎を」や「いつまでも若々しく生きる」にも通じるすばらしい考え方だと思った。(中村天風さんの本は一万円以上するので図書館で借りて読んでみて下さい)

とりあえず生き方を変えるすばらしい本だと思います。

心に成功の炎を

いつまでも若々しく生きる

2012年2月25日 (土)

「平均」を理解 大学生の76%

今日から国立大学の前期入試が始まった。

受験生がんばれ!

ところで今朝の新聞に出ていたが、大学生の4人に一人が平均の意味がわかっていないそうだ。

国公私立48大学の入学間もない1年生に試験をした結果だという。

1.「ある中学生100人の平均身長が163.5センチ」の場合確実に正しいと言えるのは

     163.5センチより高い人と低い人はそれぞれ50人ずついる

②100人の全員の身長をたすと163.5×100で16350センチになる

③10センチごとに区分けすると160センチ以上170センチ未満の生徒が最も多い

それぞれ正しいかどうか答えなさい。

この問題の全問正答率が76%だという。

平均は小学6年生で習うらしいが。

これは簡単だね。

2.偶数と奇数をたすと必ず奇数になる理由を説明しなさい

これができたのが34%。

これは中学1年で習うのかな。

まあこれもわかるわな。

3.目盛りのない定規とコンパスで線分を3等分しなさい

えっ、何て!3等分!?

2等分ならできるけど。

う~ん、難しいな。

これできますか?

2012年2月23日 (木)

本がない!

 本がなくなっている。

新聞で立川談志さんの本の特集をやっているのを読んで、そういえば「あなたも落語家になれる 現代落語論 其2」という本があったのを思い出し本棚を探したが見つからない。

実は今の家に引っ越してしばらくして立花隆さんの「宇宙からの帰還」という本がないのに気づいた。

これは「あの世からの帰還」(立花さんにはこれに連動して「証言・臨死体験」というおもしろい本もある)という本とセットで好きな本だったのだが、誰かに貸したままだったかなと思いあきらめていた。

しかしこれではっきりとした。

2冊とも引っ越し屋さんに渡してきたスライド式書棚の裏側に隠れていたのだ。

今度の家では自分の部屋の四囲に書棚を作ってもらったので、もう本棚はいらないと思い置いてきたのが間違いだった。

 両方とも入社して2~3年の間に買ったもので、どうやらこのころに買った本十数冊を入れていた一角を見逃していたようだ。

思い入れもある、大事な本が多かったはずだ。

だがどんな本があったのか思い出せない。

矛盾しているなあ。

悔しいなあ。

ところでK本さん、だいぶ前に貸したまま返してもらってない岩波古典文学大系の「西鶴集」上・下を返して下さい。

あなたも落語家になれる―現代落語論其2

宇宙からの帰還 (中公文庫)

「あの世」からの帰還―臨死体験の医学的研究

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